久々に、きつねの話の投稿です。ただし番外編
予告していたロデリック視点のマニフィコ語り
タイトルは「地平を駆ける獅子を見た」の一節で。内容とは何も関係ないです
ええ、プロ野球好きな方ならすぐお分かりでしょう、西武ライオンズの応援歌です…
(きつねの話シリーズでロデリックはライオンなので)
野球は特に好きじゃないんですが、応援歌ならライオンズかホークスが好きです
勝つと何となく嬉しいのは…ライオンズ、ホークス、日ハム、ロッテ、楽天でしょうか
(多すぎ、ようするに巨人が好きじゃないのね)
で、ライオンズの歌は松崎しげるの歌声が熱いです
昔は西友行けば聴けたのですが、今は近場になくて…やっぱり流れてないのでしょうか
(ウォルマート傘下になってしまったので)
きつねの話、番外編 たてがみ 虹の おをひいて 〜Like a rainbow〜「なあ〜、本当なんだってば」
ハイイロリスはそう言って俺の肩に手を置いた。
「お前を見る限りあまり期待持てそうにないんだよな」
実のところ、彼らの美しい母親の評判は承知していたのでさほど疑いはないのだが、彼の必死さが何だか面白く、わざと怪しむ言葉をかけていた。
「もしお前みたいな女だったらあとでシメル」
「いやいやいや嘘じゃない。兄の俺がいうのも何だが、そこらの貴族女とは格が違う美形だぞ」
「ふーん…」
ハイイロリスは豪奢な建物の窓を見上げた。その美しい妹の部屋だろうか。
彼の偉大な父親には知らせぬまま、とにかく明日の夜に大勢の前で妹と俺を婚約させたいのだという。
本人とは面識もないし、こいつの思惑通りに事が進んだとしても、あのヴァンディミオン家当主があっさり「そうですか」と認めるとは思えなかったが、あえて話に乗っていた。
何か、ほっとけない奴なのだ。
学生の頃から、こうして彼の言いだした「催し」に付き合い、大抵失敗し、オロオロする彼の腕を引いて全力で逃げる…というのがもはや恒例行事のようなものだった。
こう言っては悪いが、あわてて逃げる時の彼がまた、何とも愉快なのだ。
「まあ、いろいろ悪い噂というか激しい行動はあったけどさ、うちの妹」
ハイイロリスの口からも、また他の貴族の噂話でも、気難しい姫君という話は幾度となく耳にした。
召し使いを窓から落としただの決闘をたきつけては従者に剣をとらせただの、縁談が嫌で屋敷を全焼させただの、最近は騎士団の長を真面目に務めていたはずが原因不明の天災で団が壊滅、その後行方知れずだったとか…
「確かに、楽しげな逸話は多いがな。まあいいさ、会ってみなけりゃ本当のところなんぞわからないよ」
俺の言葉にハイイロリスは安堵の表情を浮かべ、頭をかいた。
「実際俺も会ったのは久々なんだけどな。前より何か丸くなったというか、穏やかだったからさ、あいつ。案外気に入るかもしれないよお前のこと」
「案外ってどういう」
「いやまあ気にするな」
いきなり縁談に協力しろと頼んでおいて、まったくの言いざまだ。こういうところも彼らしいが。
「で、妹どのは承知したのか。知らぬ国の知らぬ男と」
「あ、それは何とかなってる。向こうにとっても悪い話では」
「?」
「いや何でも、それより、お前のほうが大丈夫か」
「大丈夫? 何が」
「あいつの素行がさ」
「何だ、そんなこと今更。お前も言ってたじゃないか、不憫な面が多々あるって」
以前、ハイイロリスは強大な権力者である父親への恨みや劣等感とともに、妹の話を聞かせてくれたことが何度かあった。
彼から見れば、妹は父親の権威や自尊心を満たすための犠牲で、だからなおさら極端な行いに走るのだと。
「そうなんだよな…まあたいして話したこともないが、少なくともよその貴族よりもあいつのことは知っているつもりさ。
何と言っても兄だからな、俺は」
ハイイロリスは自慢げに胸をそらし、続けた。
「お前にとっても損はない、そうそういないぞあんな綺麗な娘は。
繊細な顔立ちと金の髪、内に秘めた激しい気性と豊かな感受性。お前の好みだろう。
世界中探したってこんな貴族のご令嬢は唯一無二だ。さすが俺の妹」
お前、さっきから言ってることが適当だな…
そんな兄貴風吹かすんなら、可愛い不憫な妹と学生からの(しかもそれほど多くないであろう)友を強引に婚約ってのはどうかと…
とつっこみたくなったが、ここは抑えておいた。
妹とはいえ、この大貴族の一家がそう親密な間柄とも思えなかったが、おそらく彼は彼なりに、妹に対して何らかの親近感を持っているのだろう。
妹のほうからは、どうだかわからないが。
「…一応聞くが、親父さんのほうはすんなり認めるかな?」
「ああ、あいつは見栄っ張りだから。大勢のお偉いさんの前で言われたらその場で否定などしないだろう」
見栄っ張りなのはお前も同じだな、と心中で苦笑しつつ。
「そんなものかい」
「うん、それに何と言ってもお前は腐っても王子様だからな」
「腐ってって、おい」
「冗談冗談。れっきとした王子じゃん」
「まあ、な…」
王位継承権。ただし、微妙な順位の。これも、こいつと親しくなった理由の一つだ。
実家の体質にいろいろともの申したい不肖の「三男坊」同士、意気投合するところも多いのだ。
「それ以上に、あの『航海王子』のところに娘を嫁がせられるんなら、あのごうつくも結局は認めざるをえないはずさ」
あごをなでながらハイイロリスがほくそ笑んでいる。
航海王子か。その呼び名も何だかおかしいが、「第三位」と言われるよりそのほうがずっと気楽だ。自分の仕事に対する評価みたいなものだと思えば。
「ずいぶん買っていただいて、感謝するよ」
「どういたしまして」
彼はまた胸をそらせた。
そうこうしているうちに、来客用の棟に到着したらしい。
「じゃ。お前の部屋はそこの階段上がって三階の、右突き当たりな。わからなかったらそこらの召使いに聞いてくれ。またあとで行くから」
手としっぽをひらひら振り、渡り廊下を歩いて行くハイイロリスの後ろ姿を見送りながら、俺は中庭に出た。
まったく。いつも事前の話だけは勢いがいいんだが…
失敗したら…いや、きっと失敗して、大目玉食らって、また俺に愚痴るんだろうな。
愛すべきお調子者かつ小心者。
しかし、若いご婦人と会うのはいいものだ。
それが美女と名高いハイイロリスの母親によく似ているというのなら、なおさらのこと。
「まあ、会ってみないと、な」
明朝までに薔薇を用意させておこう。親友の妹君だ、盛大に。
postscript・タイトル。歌詞の「ミラクル元年」のフレーズが好きなんですが、それだとあまりに内容と関係ないのでやめときました
・ロデリックは最初から「うまくいかねーだろーな」と思いつつマニフィコに付き合っていたのではと思います
・ダメな奴だなあと思いつつ愛すべき友人という感じかなと
・人の噂や肩書きだけで会ったこともない相手を評価したりはしない人だろう
・マニフィコは妹の容貌に相当な自信があったからこそ強引にロデリックに会わせたと思う
・漫画を読み返すとますますいい人です、ロデリック…(前にも書いた通り、私のタイプじゃないけど!)
・この人と一緒になれば、ファルネーゼは幸せになれるだろう
・だがそれじゃーやっぱり面白くないでしょー…ロデリックには悪いけど
・もう何個かロデリックのビックリ特性が追加されれば考えなくもないけど
・やっぱりファルネーゼとセルピコとの関係が、女子の気になるところでは
テーマ : 二次創作小説 - ジャンル : アニメ・コミック