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漫画やアニメの感想、下手なりの絵、そして日記。
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謎のげっ歯類(小熊か鼠に見えるモノ)としてたまに登場するのは筆者です。
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タイトルは好きなバンド、CheapTrickの一番好きな曲より。

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338:きつねの話、part11 §1:BERSERK/trash

2007/10/29 (Mon) 22:22
「きつねの話」は連作です。
最初からご覧になる場合、前の分を読む場合は右上のメニュー「category index」から「BERSERK/trash」を選んで、タイトルで探していただくと便利かと思います。


とうとう11章までになっちゃいました…
長すぎです
でも、さすがに最終章です

サブタイトルは「Till Death Do Us Part」そのまんま、死がふたりを分つまで。
今回はまだですが、この先のオチがあんまりですから、早めにお詫び申し上げます


きつねの話、part11 §1 〜Till Death Do Us Part〜

うさぎは、船がほしいという願いをかなえてもらう代わりに、お兄さんの頼みをきいて立派なライオンと結婚することになりました。
お兄さんはさらに、兵隊さんたちを送るために開かれるという舞踏会に必ず来いというのです。
たまたま庭で出会った奥さまにそれを話すと、ふうんと口をとがらせて
「おもしろそうね、私もご一緒していいかしら」
と言うので、うさぎはもちろんですと答えました。

夕方になり、きつねはうさぎの馬車の横を、馬に乗って出かけました。
馬車の窓から、リボンをつけてはなやかに飾ったうさぎの横顔が見えます。
そのようすは以前と変わらぬうつくしい貴族の娘でしたが、すこし穏やかになった気がしました。

会場になっているお役所に着くと、貴族や大商人らがたくさん集まっています。
遠い昔に、同じような場でむりやり決闘させられたのを、きつねは思い出しました。
でも、それはずいぶん昔のことのように感じます。

うさぎは、ここに来るようにと言ったお兄さんのところに向かいました。
「お兄さま」
バルコニーの手すりによりかかって、ワインを飲んでいたお兄さんの隣には、あの赤いライオンがいます。
「父上がどう言おうと、これだけの面前で婚約を発表してしまえば、いくら何でも」
「まあ、お前のそういうとこは好きだけどな。今は」
にやりと笑みを浮かべるお兄さんの言葉を、ライオンが肩を叩いてさえぎりました。

「我が姫君、ダンスを一曲」
「は、はい」
ライオンの申し出に、うさぎは頬をほんのり赤くして答えます。
ふたりは建物の中に入っていきました。

きつねとお兄さんはバルコニーにそのまま立っていると、足音が近づいてきました。
うさぎのお母さんがとりまきを引き連れてやってきたのです。
「すてきなかたねえ、私にも紹介してくださらない?」
「母上!」
奥さまはライオンとうさぎの婚約話を知っていると、お兄さんに告げました。お兄さんは、汗をかいてあわてています。
「あなた、お父さまの若い頃に似てきてよ」
「そんな」
「忠告してあげる。あの子は、あなたたちの小細工におとなしくおさまるような娘じゃないわ。
気をつけることね、痛い目を見ることになるわよ。お父さまのように」

きつねは後ろで話している親子を見ないようにしながら、窓の外から貴族たちのダンスをながめていました。
裕福なものたちの輪に混ざり、うさぎはライオンと優雅に踊っています。
ダンスを申し込む若い貴族の手を、うさぎがピシリと打ちはらっていたのは、もう遠い昔のこと。
いつまたわざとけがをしなければならないかとハラハラする必要は、もうありません。
それでもきつねには、自分と手をつないで踊っていたうさぎの不機嫌な顔が、ひどく懐かしいものに思えました。

「あなた、うさぎの従者の…」
奥さまがきつねの後ろから声をかけてきました。きつねは、貴族の女性への作法どおりに深々とおじぎをしました。
「あなたが来てからもうずいぶんたつわね」
「もう十年以上になります」
その答えを聞いて、奥さまは驚いた顔をして扇子を口元にあてました。

「となると、あなたもそうとう…
そういうもの同士は離れられないわ。絡み合った木のように。
いいわねえ、禁断の香りがするわぁ…
これからもあの子をよろしくね」

奥さまはホホホと笑うと、待っていたとりまきたちを連れて建物の中へ歩いていきました。
きつねのお母さんがおやしきの召使いだったことも、きつねがうさぎの腹ちがいの兄ということも、さらにはうさぎときつねのあいだに何があったのかも、彼女にはみんなお見通しなのかもしれません。
「するどい奥さまですねえ」
これからもというからには、奥さまはおそらく、知っていてもうさぎやお館さまには何も言う気がないのでしょう。きつねはそのことにほっとしました。
でも、うさぎときつねは離れられないという言葉に、ちくりと胸が痛みました。
今夜うさぎは遠い北の国の王子と結婚し、遠くへ旅立つための最初の一歩を踏み出そうとしています。
うさぎがそうして離れていくのを、きつねはただ見ているだけなのです。

暗くなった夜空を見上げると、光るものが見えました。
昼間に中庭の温室のそばで見た、ふたりの妖精が羽ばたいていたのです。栗と花の妖精は、うさぎの居場所をオオカミ犬たちに教えるでしょう。
きつねは、梟のくれた羽根をにぎりしめました。

心で、梟に呼びかけます。
「梟さん、きつねです。近くにいらっしゃるなら、裏口まで案内します」
「まあ、きつねさん! 心配してたんですよ」
梟はとてもうれしそうな明るい声で、きつねの頭の中に返事をしました。
そのようすに、きつねはほんのすこし胸がいたみましたが、もう引き返すことはできません。
梟に伝わらないように、一瞬だけ指から羽根を外し、戻す前に、ほんの少し考えました。
「もう、あなたとうさぎを会わせるまいと決めたのです」
きつねは彼らをある建物の前に案内しました。

うさぎが立派な王子に嫁いでいくのも、オオカミ犬を慕うのも、そのオオカミ犬たちが仲間と思ってうさぎに会いにくるのも、嬉しいのか悲しいのか、わけがわかりませんでした。
「でも私は」
きつねは考えました。
そんなことより何より、うさぎが自分より先に死んでしまうのは、見たくないのです。

そのために、今できるかぎりの知恵をつくそうと、きつねは深呼吸をしました。

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